里帰り分娩について②
妊婦さん、ご家族の皆様にはご理解・ご協力いただき職員一同、大変感謝しております。
ただ、刻々と変わる状況の中で最善と思われる方策を取っていますが
急遽方針転換する場合もあり、ご不便・ご迷惑をおかけしているのではと、
心苦しく思うことも多々あります。
皆様の安全・安心なお産のため、ご理解・ご協力いただけるよう重ねてお願い申し上げます。
現在、可能な限り里帰り分娩をお受けする方針ですが
新型コロナウイルス感染症が心配される現在の状況下では、
里帰り分娩については妊婦さんも、
また産科施設側も非常に悩ましい状況が続いています。
基本的には、一般産科施設で
新型コロナウイルス感染症の患者が出ることによる産科医療崩壊を防ぐためには
1.できるだけ里帰り分娩はしないで、現住所で分娩することを考える
ことが望ましいとされています。
しかし、今回のコロナ騒動以前の、この1~2年の産科の一番の取組みは
妊産婦のメンタルヘルスケアでした。
産後の母親の育児不安・負担をいかに軽減させるか、
産後うつを減らすか、ということでした。
分娩前後の支援を考えた場合、
やはり里帰り分娩が望ましい場合もあります。
それでは当院で里帰り分娩ができる条件はというと、
これは日本産婦人科医会が推奨している内容を基に
当院の具体的な対応を考えたものですが、
2.できれば妊娠28週0日までに、
遅くても妊娠29週6日までには実家に帰省すること。
妊娠31週以降の帰省(当院受診が33週以降となる場合)では、
当院での受け入れは困難。
3.里帰りする直前に現在かかっている産婦人科で健診を受け、
妊娠経過に異常のないこと、
そして今後3週間程度は特に異常が発現する可能性はまずないことを
診断してもらう。
4.当院(里帰り先の産婦人科)に連絡し、現在異常のないことを伝え、
受け入れてくれることを再確認し、
帰省日の2週間以降の受診日を予約する。
5.前医受診後できるだけ早く(数日以内に)実家に帰る。
この時不特定多数との接触をなるだけ少なくする交通手段
(自家用車での移動等)を考える。
6.実家で2週間外出を控え、じっと待機する。
(この間ご主人等県外の人の出入りは避ける)
帰省後は毎日体温を測り、体温が37.5℃以上の時、
あるいは何か変化あれば受診日を待たず、
すぐに当院に電話連絡をすること。
7.この2週間の待機中に発熱・その他の感染症状(咳や頭痛等)がみられなければ、
その旨当院に連絡し、受診する。
という流れで、受診していただきたいと思います。
この流れで一番の問題は、2週間の待機中に何かあった場合です。
ニュースでありましたが、里帰り後4日目頃に破水した妊婦が、総合病院産婦人科2施設で受け入れてもらえず、結局民間の施設で分娩した症例がありました。早産・未熟児でなくてよかったです。医療スタッフ・他の妊産婦への感染予防を考えた場合、先の二つの総合病院の対応も仕方がないとも考えられます。
出生後の新生児への感染予防などを考えた場合、すべての産科施設でコロナ陽性、あるいは感染が疑われる妊婦の分娩を扱うのは無理であり、それなりの準備のできている指定病院で管理する必要があります。
高知市ではコロナ陽性、あるいはそれが強く疑われ、産科的にもリスクのある妊産婦は高知医療センターに紹介、そして発熱等ありコロナ感染を否定できない通常の妊婦は国立高知病院あるいは高知赤十字病院に紹介するシステムになっています。ただ、建前はそうですが、どの病院も受け入れベッドの数はそれほど多くはありません。
ですから、特にこの2週間の待機中に何かあったら非常に悩ましい事態になります。
そう考えると、切迫早産、前期破水、その他の産科異常が増えてくる妊娠30週以降ではなく、できれば28週0日までに、遅くても29週6日までには実家に帰省することが望ましいと思われます。妊娠31週以降の帰省(当院受診が33週以降となる場合)では、当院での受け入れは困難となります。
里帰りができず現住所で分娩し、両親などのサポートが受けられない場合は、その地域の産後ケア施設、その他産後の育児支援の積極的な利用も検討対象と思われます。
ご検討の程、よろしくお願いいたします。