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母乳育児アドバイス

毎日新聞高知版,2003,8,1
高知母乳の会会長 福永寿則
(くぼかわ病院産婦人科)


 母乳育児は、単に母乳を飲ませる行為だけを言うのではありません。お母さんと赤ちゃんが一緒にいて、赤ちゃんの様子からその欲求を察知し、お母さんが赤ちゃんを抱っこし、声かけをし、赤ちゃんに乳首を含ませる。皮膚と皮膚の直接の触れ合いを通じて、お母さんは射乳の心地よさを、赤ちゃんはお腹が満たされる満足感を感じ、二人はお互いに与え合う幸福な時間を共にします。母乳育児では、このような時間が1日に何回となく繰り返され、幸せな、豊かな母子相互作用が積み重ねられていきます。
 この豊かな母子相互作用によって、赤ちゃんは自分の存在感を確認し、自然に赤ちゃんの中に他者との豊かな交流を可能とする心が育ってきます。
 母乳育児は大変な、しんどいものではなく、本来自然で、容易で、お母さんにも赤ちゃんにも喜びの多いものです。産後最初の3日間は母乳はあまり出ないのが普通です。でも、この間に栄養不足・水分不足にならないように、赤ちゃんは身体に栄養と水分を蓄えて「水筒とお弁当」を持って生まれてきます。そして、大多数のお母さんでは産後4日目頃には母乳が十分出るようになります。お母さんと赤ちゃんが一緒にいて、赤ちゃんに正しく乳首を含ませる、回数多く授乳し、必要もないのに粉ミルクを追加しない、これだけのことです。医学的に粉ミルクの追加が必要になることは実際には稀で、その気にさえなれば、10人中9人以上の母子では、完全母乳育児ができるのです。
 粉ミルクを追加せざるを得ない場合でも、母乳育児の意味を考えると、全く粉ミルクだけになるのではなく、赤ちゃんが自分からおっぱいを離れる卒乳(最近では断乳という言葉は正式に使われなくなりました)までは、授乳を続けていただきたいものです。
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