学会発表
高知ファミリークリニックにおける妊娠41週妊婦の管理と帝王切開率
第57回日本産科婦人科学会高知地方部会学術集会,2007.12.15
福永寿則 (産婦人科医)
(発表要旨)
妊娠・分娩管理は安全がもちろん大事ではあるが、帝王切開分娩も手術・麻酔の合併症以外に、次回妊娠時の反復帝王切開、癒着胎盤などの問題もあり、その適応には慎重な判断が望まれる。当院では妊娠41週妊婦に対して、ラミセルやネオメトロによる子宮頸管熟化、その後アトニンO点滴による分娩誘発を行っている。この管理方針の効果を、帝王切開率および児のアプガースコアから検討した。
対象は2007年1月~9月分娩のうち、分娩時妊娠週数が41週0日以上であった31例。
管理方針としては、NST、羊水量に異常なく胎児の状態が良好と考えられるときは経過をみ、自然陣痛の発来がなければ、妊娠42週までに分娩となることを目指して、妊娠41週3日~4日頃に入院し分娩誘発を行った。午前8時に入院しCTGを装着し胎児の状態を確認後、午前9時頃にネオメトロを挿入し滅菌蒸留水100mlで膨らませた。子宮口開大が1.5cm以下のときは、先にラミセルを挿入した。ネオメトロ挿入後およそ半日から1日で子宮口が6cm程度開き、ネオメトロが膣内に脱出することが多い。その後陣痛が弱ければアトニンO点滴で陣痛強化した。
この期間(2007年1月~9月)の分娩数は364例で、帝王切開が52例、帝王切開率14.3%であった。帝王切開の適応で一番多いのは「既往帝切後妊娠」の20例、次いで「骨盤位」の15例であった。この二つを除くと、分娩数329例、帝王切開例17例、帝王切開率5.2%。その内訳は、分娩停止が11例、胎児機能不全が5例、常位胎盤早期剥離が1例であった。この329例のうち、31例、9.4%が妊娠41週0日以降に分娩となった。
今回の検討の結果は以下の通りであった。
31例のうち、8例25.8%が帝王切開となった。
この31例を二つのグループに分けて考えると、まず、自然陣痛発来、あるいは破水で入院したものが21例で、その内2例、9.5%が帝王切開となった。この21例の中には、誘発入院を予定していたが、その日の前に自然に陣痛が発来したものも多く含まれる。
一方、誘発目的で入院したものは10例で、その内帝王切開は6例、60%で、分娩停止が4例、胎児機能不全が2例であった。
なお、この31例の児のアプガースコアは、1分後が7点1例、8点12例、9点18例で、5分後はすべて9点以上であった。
これらの結果から、症例数は少ないが、次の3点が言えると思われる。
1.NST,羊水量でモニターしながら、妊娠41週3日~4日まで待つという方針は、それまでに自然陣痛が発来し、順調に経膣分娩になる例も多いことから、問題ないと思われる。
2.妊娠41週3日~4日以降に分娩誘発した例では、経膣分娩が成功している症例もあるが、6割で結果として帝王切開になっていることを考えると、個々の産婦に十分説明した上で、分娩誘発あるいは選択的帝王切開を選ぶことが必要であると思われる。
3.帝王切開になった例も含めて、31例すべてで出生後の児の状態は良かったことから、今回の管理方針は児についても特に問題ないと思われる。